疼痛

痛みに関与する扁桃体について

慢性痛やストレスと切っても切れない関係にある扁桃体について解説します。

 

痛みだけではなく、心理的にストレスを感じた時にも働く扁桃体。
僕は新宿の人混みの中に入ると扁桃体が過活動になります(笑)

大脳辺縁系は本能や情動機能を司る中枢です。
そして扁桃体も辺縁系に属しています。

進化的にみると、
陸上に生きる生物が生き残るために活用していた感覚器官は実は嗅覚なんです。

恐竜が陸上を支配していた頃、か弱い哺乳類たちは夜に居場所を求めました。
そして夜行性となった生物の多くが嗅覚を発達させます。
嗅ぎ分けられる化学物質の量を増やして、少しでも早く危険を回避するために。

嗅覚を基にした神経機構で構成された脳部位、それが大脳辺縁系です。

扁桃体、海馬、嗅内皮質、眼窩回、帯状皮質などで構成されている辺縁系は、
個体の生存に無くてはならない働きを持ちます。

すなわち、快/不快、恐れ/怒り、などの情動の起点としての働きです。

少し考えれば当たり前ですけど、
ヒトが何らかの行動を起こすとき、そこには必ず感情が関与しています。

あの人は話していて気持ちがいいからまた会いたい。
この道は暗くて嫌な感じがするから通りたくない。
友人がバカにされて腹が立つ。

元を辿れば全て生存本能に行き着きます。

生き残るのに有利な刺激を僕たちは快情報として認知するからです。

そう考えると、危険を避けるために扁桃体が働くのも全く正常な反応だと思いませんか?

危険を避けるセンサーがなければ、ヒトはいま現在生き残っていないでしょう。

情動によって喚起された身体反応や行動は、本能行動あるいは情動行動と呼ばれます。
そして視床下部とその支配する自律神経によって、目に見える反応として外界に表出される。

俗に言う闘争-逃走反応ってやつです。
闘うか、逃げるか、さもなくば固まるか。

闘うにしろ逃げるにしろ、身体を動かす必要があります。

だから心拍数を上げ、血圧を上げて四肢に血液を送り込む。
木から滑り落ちないように掌や足裏に汗をかく(現代人には必要ないけど)。

山道を歩いていて熊を見つけたらとりあえず動きを止めますよね?見つからないように。
フリージングと呼ばれるこの反応は他の動物にも認められます。
だから車道に飛び出してきた猫は車に跳ねられてしまうんですけれど…。

重要なのは、
生きるために必要な原始的な情報(臭い、痛み、触覚、内臓感覚、視覚、味覚、聴覚など)は全て扁桃体に入力される、ということ。

入力された情報は、
その良し悪しを判断するために過去の記憶と照合されます(記憶に関与する海馬が近くにあるのは偶然じゃないってことですね)。

例えると、
父親と良好な関係を結べた人はおじさん相手にも好意的に話をするけれど、虐待を受けていた人は男性自体に嫌悪感を覚えたりする。

過去の経験によって状況に対する反応が変わるのは当たり前です。

そして、生存に有利な情報よりも、むしろ危険な(不快な)情報の方を僕らは優先的に記憶します。

だって生き延びるためには「どのキノコに毒があるか」の方が大切な情報でしょ。

だから嫌な思い出とか嫌いな上司(失礼)は記憶に残りやすい。
口コミは五つ星の評価より酷評の方が広まるのが早い。

よくよく考えてみると、噂話の8割は悪口じゃないですか。
それが面白おかしく修飾されていようがいまいが、根底にあるのは「不快な」感覚だと思います。

痛みも同じです。
身体が侵害された、というのは命の一大事を知らせる大切な警告信号ですから。

侵害信号が扁桃体に送られて、
視床下部その他が反応を起こすまでの経路は二つ存在します。

例えるなら一般道と高速道路。
よく知られている視床や体性感覚野を経由する経路は遅い一般道の方です(そのかわり多くの情報を含んでいる)。

その一方で、もっと早く扁桃体の中心核に情報を送る経路が存在する(腕傍核が関与)、
ということは形だけでも知っておくといいんじゃないかと思います。

ヒトがいかに侵害刺激を重要と認識して進化してきたかが分かりますからね。

というわけで、
生存に必要不可欠な部位として発達してきた扁桃体ですが、それが過剰に働くといろいろと困ったことが起こるわけです。

その話はまた今度。

まとめ

・扁桃体は負の情動を生み出す中枢であり、そこには生存本能が関与している
・痛みは生体にとって無くてはならない警告信号である
・扁桃体が視床下部に情報を送ることで自律神経系が身体的反応を起こす